剣道 昇段審査 模範解答

剣道昇段審査学科試験(筆記試験)の模範解答例(初段)

剣道初段昇段審査の学科試験(筆記試験)の模範解答例です。

 

年度によって出題の内容が異なりますので、他の段位の模範解答例もご参照下さい。

 

1.剣道の目的

 

剣道は竹刀で打ち合って、勝った負けたという技を争う競技でなく、すこやかな心を育て、健全な身体をつくり、正しい礼儀を修めるために稽古をするのである。

 

したがって剣道を修める事は、

 

1.心を磨く
2.身体を練り鍛える
3.技術を習得する

 

を目的としている。それは争いを目的とした暴力でなく、健全な社会人となるため、
武道を修めるのであるから、この目的を一日も忘れてはならない。

 

 

2.剣道と礼儀

 

礼儀は人間として、平和な社会生活をする上でも大切であるが、剣道では昔から「礼に始まり礼に終わる」といわれているように、極めて大切なものとされてきた。
どのように技が上達しても、品位や人柄が欠けているようでは、本当の剣道を習ったとは言えない。
剣道は、多くの運動の中でも激しい性質を持っている一つであり、少し間違えると荒っぽい行動になりやすく怪我もしやすい。
これを未然に防ぎ、正しい剣道を習得するためにも礼儀や作法を重視しているのである。
道場だけでなく、家でも、学校でもどのようなことがあっても常に真心をもって礼儀正しくし、立派な人格と精神を養うように心掛けなければならない。

 

 

3.座法

 

剣道の礼には立礼と座礼がある。
稽古や試合をする場合には、一般に立礼が行われ、道場内の稽古の始めと終わりには、座礼が行われる。

 

@正座の方法

 

(1)目は前方を正視する
(2)左足をわずかに後ろに引き静かに膝をつき、次に右膝をつく。
(3)かかとの上に尻を落とし、いったん中座の姿勢を取る。
(4)両足の親指を重ねる。
(5)両膝の間を少し開き(こぶし約2つ分)、静かに座る。
(6)あごを引いて背筋をまっすぐに伸ばす。
(7)肩の力を抜き、口を閉じて、腹式呼吸をしながら前方を正視する。
(8)両手は指を揃えて内側に向け、もも(足の付け根部分)に置く。

 

A立ち方

 

腰を上げ両つま先を立て、いったん中座の姿勢を取った後に右足をわずかに前に踏み出して静かに立ち、左足を右足に引きつける。

 

B座礼の方法

 

正座の姿勢で相手の目を見た後、上体を静かにゆっくりと前方に傾けるとともに、両手を膝前に進めながら、指先を伸ばし、八の字形に置き、静かに頭を下げる。
少しの間その姿勢を保ち、ゆっくりと元の正座の姿勢に戻す。
(注)首を曲げたり腰を上げたりしないこと。

 

 

4.中段の構え

 

中段の構えは、攻撃にも、防御にも適した基本の構えである。

 

(1)全体の要領

 

真直ぐに立った姿勢から右足をやや前に出し、左こぶしは、へその下のこぶし一握り前のところで、右こぶしは、鍔(つば)からわずかに離して握る。
竹刀の弦を上にし、剣先の高さは喉の高さ、剣先の延長線が相手の眉間にくるよう構える。

 

(2)目の付け方

 

相手の目に付け、しかも身体の全体を見るようにする。

 

(3)竹刀の握り方

 

左手は小指を柄頭いっぱいにかけて上から握り、右手は鍔(つば)元からわずかに離して、上から握る。両手とも小指、薬指、中指の順に強く締め、人差し指と親指は力を抜いて軽く竹刀に添えるようにする(このとき親指は下方に向くように握る)。
両手とも、親指と人差し指の別れ目が竹刀の弦の延長線にくるように握る。

 

(4)両肘

 

両肘は張り過ぎず、すぼめず過ぎず、伸ばしすぎずの状態で、力を入れ過ぎないようにゆとりを持たせて構える。

 

(5)両足の位置と踏み方

 

両足のつま先は前方をまっすぐに向き、左右の開きは足幅1つ分(約10cm)、前後の開きは右足のかかとの後ろの線あたりに左足のつま先がくるようにする。
体重は両足に等しくかけて、左足のかかとは、わずかに浮かせる。
両ひざは、曲げず伸ばさずの状態に自然に保ち、身体が自由にどの方向にも運べるようにする。

 

 

5.足さばき

 

 

足さばきとは、相手を打突したり、かわしたりするための足の運び方であって、歩み足、送り足、開き足、継ぎ足などがある。
『一眼二足三胆四力』という教えに示されるように、剣道では足のさばきが非常に重視されている。

 

(1)歩み足
 前後に遠く速く移動する場合の足さばき。最も遠い間合いからの打突の技を出す場合に用いる。

 

(2)送り足
 色々な方向に近く速く移動する場合や、打突の場合の足さばき。

 

(3)開き足
 身体をかわしながら相手を打突したり防いだりする場合の足さばき。
 近い間合いからのだと角技を出す場合に用いられることが多い。

 

(4)継ぎ足
 遠い間合いからの打突をする場合の足さばき。
 やや遠い間合いからの打突の技を出す場合に用いられる足さばき。

 

 

6.剣道具の着脱順序

 

(1)剣道具の着装は、迅速、確実に行い、稽古(試合)中に脱げたり、緩んだりしないように正確に着ける。
(2)使用後は清潔、整頓に心掛ける。
(3)防具の着装は、垂⇒胴⇒面⇒左小手⇒右小手の順につけ、脱ぐ時はこの逆に行う。

 

 

7.剣道具を着ける場合の注意事項

 

(1)面ひも

 

(ロ)ひもの末端(はし)は同じ長さに揃える。面ひもの長さは、結び目から40cm以内。

 

(2)垂
 (イ)大垂の中央部を真ん中に、垂の帯を下腹部に当てる。
 (ロ)ひもを後ろ(袴の腰板の部分)で交差し、腰骨の上から中央の大垂の下で結ぶ。

 

(3)胴
 (イ)体の真前に正しく着ける。
 (ロ)十分に上げて、上紐(長い紐)は背中で交差して、胸の上乳革で結ぶ。
 (ハ)上がりすぎると喉や脇下を圧迫し、動作が鈍くなり、胸と垂の間が開いて危険である。
 (ニ)下がりすぎると喉と脇下が開くので、わき腹を叩かれたりして危険である。

 

(4)面
 (イ)手ぬぐいで頭部を包む。面を装着した時、手ぬぐいが飛び出さないよう、余った部分は折りたたむ。
 (ロ)両手で面の頬部を持って顎を内輪に入れ、次に額部を入れる。
 (ハ)ひもは、後頭部(目の高さ)で交差し、また前に回して面金の最上部で交叉させ(格子一段目に両紐を通す)後頭部で結ぶ。
   そのひもの長さは概ね40センチ以内に揃える。
 (ニ)危険防止の観点から、物見の位置が目の高さにくるよう装着し、ひもの結び目は目の高さにくるようにする。

 

(5)甲手(小手)
 (イ)甲手(小手)ぶとん(筒の部分)を持って着装する。
 (ロ)頭をもって着脱すると、その部分が変形するばかりでなく破損しやすい。

 

 

8.剣道具を脱ぐ場合の注意事項
(1)剣道具を脱ぐ時、結んだ紐は必ず解いて、ゆっくり脱ぎ静かに置き、決して乱暴な取り扱いはしない。
(2)甲手(小手)は、右⇒左の順に取り外し、両膝の前に揃えて置く。
(3)面紐を解き、ひもを輪にたぐり、両手で面の両頬に当て、頭部から脱ぐ。
  面の中にたぐったひもを入れ、両甲手(小手)の上に置く。
(4)手拭いを脱ぎ、汗を拭き(面の中の汗も拭く)、広げて面の上に置く。
(5)胴は下から上のひもへと順に解き、裏側を手前にして小手の前に立てて置く。
(6)垂は垂帯のひもを解き、脱いだ後、胴の鏡の前に立て掛けて置く。

 

 

9.掛け声

 

剣道では、掛け声も技の一つといわれているほど、大切なものである。
掛け声は、腹の底から大きく、重みがあり、力強いものでなければならない。
口先だけの弱い「犬の遠吠え」のような声は、かえって相手に軽く見られて逆効果となる。
しかし、無用な掛け声や、野卑な掛け声を出してはならない。
掛け声の効果は、
(1)意志が集中して、元気を増し、気力を養う。
(2)相手に威圧感を感じさせる。
(3)心気力(気剣体)が一致する。
(4)打突がしやすく、しかも鋭くなるなどの利点がある。

 

 

10.切り返し(打ち返し)

 

剣道上達の近道は、切り返しを十分稽古する事である。
また、基礎を養うにも有効な方法である。

 

1.切り返しの方法
(1)その場、連続左右面打ち。
(2)前進連続左右面打ち。
(3)後退連続左右面打ち。
(4)正面⇒前進連続左右面打ち。
(5)正面⇒後退連続左右面打ち。
(6)正面⇒前進連続左右面打ち⇒後退連続左右面打ち⇒正面

 

2.切り返しの効果
(1)体制を整え身体を柔軟にし、手足の力を増す。
(2)身体を強くし、間合いを知り、打突を正確にする。
(3)両手の腕力平均にし、前後左右からだの動作を敏捷にする。

 

3.切り返しの注意事項
(1)両肩、両腕を柔らかく力を抜く。
(2)動作は大きく正確にする。
(3)左こぶしは、身体の中心線から外れないようにする。
(4)刃筋を正しくする。
(5)両こぶしの絞りと足の運びを一致させる。
(6)習熟するにつれて、旺盛な気迫をもって息の続く限り一息で、体勢を崩すことなく連続左右面を打つようにする。

 

 

11.掛かり稽古

 

掛かり稽古は、自分より上手な相手に対して、正しい間合いから気合いを込めて激しく打ち込み、また相手に打たれる事を一切頭におかず、
体力、気力の続く限り、出来るだけ多くの技を出して打ち掛かるのである。
(注)掛け声を大きく、遠間から体を十分動かし、正しい姿勢で確実な打突(基本で習得した技)を仕掛け、捨て身で打ち込むことが必要である。

 

 

12.目付け

 

「目は心の窓」や「目は口ほどにものを言う」と昔から言われているように、心の動きが最も良く表れのが目である。
したがって目の付け方は、心の動きを最もよく表す相手の目に付け、少しの動きをも見抜くように心掛け、しかも相手の一部だけを見ているのではなく、身体全体を見るようにするのである。<観見の目付けという>

 

 

13.間合い

 

相手と自分との距離を間合いという。剣道では、この間合いを三つに分けている。

 

(1)一足一刀の間合い
一歩踏み込めば相手を打突でき、一歩退けば相手の攻撃を確実にかわすことが出来る距離で打ち間とも言われ、剣道の基本的な間合いである。

 

(2)遠間
一足一刀の間より遠い間合いを言う。
この間合いは、相手が一歩踏み込んで打突しても、有効な打突にはならない安全な間合いで、試合や上位の者に対しては、この間合いを取り、相手の隙を見て、一足一刀の間合いに進んで打突するのである。

 

(3)近間
一足一刀の間合いより近い間合で、そのまま一歩踏み込んで打っても「もと打ち」となり、一歩でも退けば、すかさず相手から打突される危険な間合いである。

 

 

14.残心

 

(1)残心とは、打突した後の「心身の備え」を言うのであって、わかりやすく言えば、油断をしないということである。
(2)打突した後油断すると、構えが崩れたり、攻撃が成功しなかった場合にすぐ相手から反撃されたり、また続いて攻撃する事が出来なくなるので、どのような場合でも油断せず、いつでも打突出来る心構えが残心である。

 

 

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